EBMナウ
EBM (Evidence based medicine::単なる、少数例の経験から得た知識ではない根拠に基づく医療行為。
今週のEBM,ナウ(234)

-UCBT for inherited metabolic diseases-
(遺伝性代謝疾患へのさい帯血移植)

基礎疾患は
 Hurler syndrome
45例、
 Krabbe disease36例、
 Sanfilippo syndrome19例、
 Metachromatic leukodystrophy15例、
 Adrenoleukodystrophy13例、
 Tay Sachs disease9例、
 Hunter syndrome6例、
 Lesch-Nyhan disease4例、
 Sandhoff disease3例、
 Hurler Scheie2例、
 Niemann-Pick B 2 例
 その他5例で
 計159例。 
年齢は1.5歳、
体重は12Kg、
輸注細胞数は7.57x107/Kg
,輸注CD34細胞数は2.14x105/Kg。
 以上は、いずれも中央値。
多変量解析によると好中球の生着に有利となる因子は
 ①年齢2歳以下、
 ②男児、
 ③CFU-s高値
 ④CD34高値です(文献 Table 2)。
良好な生存率に寄与する因子としては
 ①移植前のPSが良好、
 ②民族性の一致 
 ③CFU-s高値です(文献 Fig 1)。

考察:移植後4.6年の追跡の結果、
 97%の症例が完全ドナ-キメリズムを達成。
 測定可能な酵素レベルも正常化。
 13例が生着不全。
従来の報告より生着不全が少ないのは
 ①十分な移植前処置、
 ②輸注細胞数が多い
などに依ると思われます。
過去25年間に約1000例の移植が施行されましたが、ほとんどは血縁者からで、その全生存率は50%程度です。 今回の報告では全体の5年全生存率が58%ですが、移植前のPSが高い症例に限定すると、その全生存率は75.7%でした。

結論:血縁者ドナ-がいないときの治療として、迅速に利用でき、かつ多くの細胞数を移植できるさい帯血移植が有用です。

コメント:診断後早期の移植のためには、さい帯血が有力な移植細胞源である。


文献:Prasad VK et al. Unrelated donor umbilical cord blood transplantation for inherited metabolic disorders in 159 patients from a single center: influence of cellular composition of the graft on transplantation outcomes. Blood 2008; 112: 2979-2989.