EBMナウ
EBM (Evidence based medicine::単なる、少数例の経験から得た知識ではない根拠に基づく医療行為。
今週のEBM,ナウ(282)

-Breastfeeding and GVHD-

(母乳栄養とGVHD頻度)

 マウスモデルで母子間には母乳栄養がとりもつ移植免疫寛容があることを証明した(文献1)。 マウスに骨髄移植施行し、その生存率を比較。 母乳栄養の有無によって移植後合併症であるGVHD頻度に差がみられます。 実験系の詳細は省略しますが、そのドナ-マウスへの授乳中に抗CD25モノクロナル抗体を投与するとそのGVHD抑制効果は消失しました。 以上からCD4+CD25+regulatory T cellがこの機序に関与していると思われます。 25年前から腎移植では同様の報告があります。 その内容は以下です(文献2)。 母親をドナ-として腎臓移植をうけた55名の解析。 27名が母乳栄養群、28名は母乳栄養ではない。 腎臓移植1年で移植腎が機能している頻度は母乳栄養群82%、母乳栄養ではない群は57%と有意差を認めました。 母乳栄養の有用性が指摘された論文。 最近ではアレルギ-性喘息の機序にもCD4+regulatory T cellが関与したTGF-βの存在が喘息予防の役割を担うとされます(文献3)。 そして、それは母乳中にあり母乳栄養によって新生児へ移行するようです。これもマウスの実験系です。 

コメント:意外な母乳栄養効果。

文献:1. Aoyama K et al. Improved outcome of allogeneic bone marrow transplantation due to breastfeeding-induced tolerance to maternal antigens. Blood 2009;113:1829-1833
2. Campbell DA Jr et al. Breast feeding and maternal-donor renal allografts. Possibly the original donor-specific transfusion. Transplantation.1984;37:340-344.
3.Verhasselt V et al. Breast mlk-mediated transfer of an antigen induces tolerance and protection from allergic asthma. Nat Med.2008;14:170-175.