EBMナウ
EBM (Evidence based medicine::単なる、少数例の経験から得た知識ではない根拠に基づく医療行為。
今週のEBM,ナウ(286)

-Hypothyroidism after allo-HCT-

(移植後甲状腺機能低下症)

 従来、移植後後期の合併症と理解されている甲状腺機能低下症の頻度は9~15%とされている。 この報告は近年多く実施されているRIC(ミニ移植)における甲状腺機能低下症の研究。

対象:ミネソタ大学で2000年から2005年の間に施行されたMA(骨髄破壊的前処置)97例、年齢中央値37歳と RIC84例、年齢中央値54歳です。 TBI(全身放射線照射)線量はMA群が1320 cGyに対してRIC群は200 cGyです。 2群間には年齢以外に有意差を認めません。

結果:観察期間は12から75ヶ月。 11例が甲状腺機能低下症を合併(subclinical が9例、overtは2例)。 181例の3年累積発病頻度は6%で、移植から中央値13ヶ月後に発症。 甲状腺機能低下症合併頻度はMA群が8%、一方RIC群5%と両群間に差を認めず。

考察:過去の報告ではTBIなしの移植(BUCY)でも11.7%という頻度が知られている。 TBI線量の増加につれて3%から17%へと増加傾向との報告もある。

結論:移植後数年間の観察で、TBIを用いたMA群とRIC群間で甲状腺機能低下症の頻度に有意差はない。

コメント:観察期間がもうすこし、長い時期での続報が待たれる。

文献: Majhail NS et al. Similar risks for hypothyroidism after allogeneic hematopoietic cell transplantation using TBI-based myeloablative and reduced-intensity conditioning regimens. Bone Marrow Transplant 2009;43:949-951