EBMナウ
EBM (Evidence based medicine::単なる、少数例の経験から得た知識ではない根拠に基づく医療行為。
今月のEBM,ナウ(46)

悪性リンパ腫治療後の心血管合併症とは?

 悪性リンパ腫治療後にみられるアントラサイクリン系抗がん剤の心筋毒性は有名です。その治療後の心血管合併症の頻度は、有意に多いのでしょうか?  欧州(EORTIC)からの報告です。Aggressive non-Hodgkin lymphomaに対して6サイクルのdoxorubicinを含む化学療法を施行した症例(1980年から1999年)で心血管合併症の発生率を比較検討しました。慢性心不全の発生に関する因子は1.55歳以下での化学療法とサルベ−ジ療法を受けた例。2.放射線治療が40Gy以上。3.高血圧の合併。4.喫煙。

 表(文献から改変)に示すように脳血管障害と心筋梗塞の頻度は長期追跡でも不変でした。



結論:悪性リンパ腫治療後長期に追跡すると慢性心不全の発病率が高かった。

コメント:心疾患の長期モニタリングが必要。薬剤の毒性が数年後にみられる事が明らかにされた。今後は治療前から長期合併症への説明が必要。


文献:Mozer EC et al.Long-term risk of cardiovascular disease after treatment for aggressive non-Hodgkin lymphoma.  Blood. 2006; 107: 2912-2919.